不思議で怖い話

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違法駐車

2019/07/04

知り合いの話。
まだ学生だった頃のことだ。
彼が違法駐車をして車を離れ、
しばらくしてから戻ってくると、
自分の車の下から人間の足が飛び出していた。
周りのアスファルトが赤黒く汚れている。
吃驚して覗き込むと、それは人ではなく、
精巧に造られたマネキンだった。
何か重い物に踏まれたのか、
頭が半分潰れている。
赤黒い液体も、血ではなくて
何かの塗料のようだ。
シンナー臭い。
「誰の悪戯だよ、タチが悪いな!?」
そう怒ったものの、違法駐車をしていた自分も
決して褒められたものではない。
マネキンを車の下から引っ張り出し、
邪魔にならない場所に退けると、そこを後にした。
おかしなことになったのはそれからだった。
彼が路上駐車をする度、
必ずマネキンが車の下に放置されるようになったのだ。
頭が潰れていたり、胴が抉れていたり、
腕や脚が千切れていたりと違いはあったが、
毎回同じように事故を模していた。
幾度も隠れて見張ってみたが、
その時には悪戯はされない。
油断して車から離れた時に限って、
マネキンが出現したという。
すっかり根負けしてしまい、
彼は違法な駐車をしないようになった。
以来、不気味なマネキンも現れなくなったという。
そしてつい最近の話。
久し振りに、彼と再会する機会があった。
話が弾んでいると、
途中でこんなことを言ってくる。
「そういや、あのマネキンストーカーの話を憶えてるか?
俺の車の下で、事故者の格好させてたって奴」
「憶えているよ」
と返すと、続けてこんなことを言う。
「アレがまた出やがった。
この前、女房の実家へ里帰りした時だよ。
一寸の間だけ路上駐車したんだけど、
車を実家へ移動させようと戻ってみたら、
昔のようにマネキンの足が突き出していやがった。
だあぁー!しつこいよ、一体誰なんだよ、何がしたいんだよ!?」
彼はそう言って頭を掻き毟っていた。
「……まぁ、路上駐車は出来るだけ止めた方が良いね」
私にはそう言うことしか出来なかった。

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