不思議で怖い話

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花火を怖がる犬

2022/05/03

あまり恐く無いので期待しないでください。
私は霊感はまったく無く、信じてもいないのですが、これは実話です。
中学生の頃、可愛がっていた犬がいました。そいつは小型の日本犬で、飼い主に似て気が小さくてアホなヤツでした。
散歩は大好きなのですが、気が小さく、花火が大っ嫌いでした。夏になるとロケット花火の音が聞こえるだけで犬小屋から出てこなくなるようなヤツでした。
ある夏の晩、私は中学の友達から近所の公園での花火に誘われました。その当時、うちの両親の方針は夜遊び禁止でしたからどれだけ花火に行きたくても許可が出ないことを知っていた私は犬の散歩に行くという理由で家を飛び出しました。
全力で抵抗する犬をズルズル引きずりながら、花火の音が聞こえる公園まで引っ張って行きグランドのフェンスにロープをくくり付けました。
友達は10人位来ており、しばらく犬のことは忘れて馬鹿騒ぎを楽しみました。花火は一時間程度で終わり、今度は円陣を組んでトークが始まりました。
話始めて30分くらいでしょうか、軽く
「トントン」
と左肩を叩かれました。
反射的に左に振り返りましたが誰もいません。左隣の友達とは少し距離が空いており、彼の仕業なら手の動きが見えるハズでした。
次にイタズラで右のヤツが腕をまわして叩いた可能性を瞬時に考え、右隣を確認しましたが、右の友達は両手を前に出して喋っていました。
気のせいにしては叩かれた感覚がはっきりしているなと考えながらもう一度左を振り向くと20m程後ろのフェンスにくくり付けた犬がじっとこっちを見ながら帰りたそうにゆっくり尻尾をふっていました。
こいつの臆病な性格から考えて、おそらく花火の間中ずっと私を見つめていたのでしょう。ちょっとゾッとしたのと、悪いことしたという気持ちが合わさって、友達に別れを告げ、家に帰ることにしました。
犬は尻尾をふりながら、ロープをグイグイ引っ張って家まで走って行きます。と、公園からだいぶ離れた曲り角で犬がピタリと立ち止まり普段見せたことが無い感じにニヤリと口元を歪ませ、まっすぐに私を見上げ
「ケケケッ」
と人の笑い声のような音を出しました。
次の瞬間いつもの犬に戻っていましたが、私はよくわからない恐怖を覚え、しばらくつい犬の顔色を伺ってしまう日が続きました。
これが私の経験した唯一の不思議な話です。ちなみにこの犬は去年14才で死んでしまいましたが、こんな声を聞いたのは後にも先にもこの一回だけです。

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