不思議で怖い話

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よいもの

2019/07/08

小学校高学年の夏休み。
祖父母の元へ一週間ほど泊まりで帰省していた時の話。
山奥の村落、20軒ほどが身を寄せ合うところで、
村には私のような子供は一人も居なかった。
住人はほとんどが高齢者ばかりのようで、
過疎という言葉が当てはまる場所。
かといって暗い雰囲気は無く、
小さな訪問者(私)に皆が親切にしてくれた。
「ミノル(父)の倅か、ほーかほーか。」
「テービもねぇからつまらんろ」
「独楽回すか、独楽」
「後で、釣りいくべ」
「虫がいねぇんだろ、あっちは。捕り方おしえんべか」
どちらが子供か・・・。
でも、うれしい。
二日目に祖父と釣りへ出かけた。
村の爺様ほとんど連れて・・・。
山間の上流、比較的流れが緩やかな場所。
気を使ってくれているのは分かった。
竿の振り方や餌のつけ方、
魚の居そうな場所などを教わり・・・
十人居ると十人が微妙に違う。
釣り始めて二時間もしないうちに、
爺様たちは宴会になっていた。
一人竿を振る私のところへ代わる代わるきては、
微妙に異なるコツを教えてくれた。
「あ?かかった?」
そろそろ飽きかけていたところ竿が引かれた気が。
引き上げて見ると、緑色の塊だった。
見ていた祖父と爺様達は、遠巻きに
「お、ゆっくりな、ゆっくり」
「でぇじにあつかえ」
等、わけがわからない。
丁寧に外し、
よく見ると緑色に錆びた風鈴のようだ。
「爺ちゃん、これ」
と祖父に渡そうとしても受け取らない、
触ろうとしない。
「おっ、いいからお前がもってろ」
ちょっと待って下さい、お祖父ちゃん。
他の爺様達も笑顔だが、誰も近づかない。
その後すぐに村へ帰ることになった。
祖父の家へ戻ると祖母も同じ反応だった。
近づこうとしない。
でも、泣くほど不安になったわけではなかった。
村中の人が祖父の家へ集まってきた。
お爺ちゃんお婆ちゃんだらけの中。
「それにはおめぇ以外触れねえんだ」
「良い事があるよう」
「わしは二度目かの」
「まえは誰だった?」
等、笑いながら話していた。
祖父が
「それはお前のもんだ、
綺麗にして大事にしなきゃな」
と、小さな箱をくれた。
とりあえず箱へしまい、
やっと重たいものから逃れられたような気がした。
箱は仏壇へ納められ、
私が帰る日までそのままだった。
帰る日まで村中の人から風鈴の経緯を聞かされていたが、
『よいもの』である以外内容がまちまちなため、
結局分からず終いでいる。
今年も風鈴をつるしてはいるが、
残念ながら音が鳴らない。
ただ、あの時のお爺ちゃんお婆ちゃん達の笑顔、
子供のようだった。
何が起きるのかワクワクしている。

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