不思議で怖い話

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家の記憶

2019/07/01

数年前に実家で、
甥っ子や姪っ子達とトトロ観てた。
「そういや、うちも昔はこんなお風呂だったよねぇ」
と俺。
家族全員が何故かきょとんとした顔。
「ほら、まん丸い五右衛門風呂でさ、スノコみたいなの踏んで入るの、覚えてない?」
「兄ちゃん、どこでそんなお風呂入ったの?」
と不思議そうな妹。
両親も似た様な表情で俺を眺めている。
「何を言ってるんだお前は?」
「いやいやいや、この家昔はすげーボロ家だったじゃん」
じれったくなった俺は、
その辺にあったチラシの裏に、間取りをスラスラ描く。
「ここが凄い狭い廊下で、その先が土間になってて、
土間のすぐ横が風呂場で…」
「ちょっと待て」
「?」
父親が描きかけの空白部分を指差して言った。
「ここには何があった?」
「えーと…井戸があって、ポンプが1日中ウンウン言ってた」
俺は井戸の印に丸を描いて、
そこからパイプを家の外に向かって伸ばした。
「なんか、近所に住んでた鯉飼ってる人の家に売ってたとか…あれ?」
そこで奇妙な感覚に陥る。
スラスラ描けるほどハッキリ覚えていた記憶が、
描くそばからほろほろとあやふやになって行く。
「それ誰に聞いた?」
「誰って、爺ちゃん…あっ!」
祖父は自分が生まれる前に他界していた。
「確かに昔は五右衛門風呂だったし、井戸の水を近所に送ってた。
だけど、お前が生まれた年に建て替えたんだぞ?」
「え?あれ?」
すっかり描き上がった古い平屋の見取り図は、もう知らない家になっていた。

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