不思議で怖い話

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鏡の中のうしろ

2019/05/18

「鏡の中のうしろが怖いの」
K子が突然そんな事言い出すものだから、
僕は思わずお茶をこぼしてしまった。
「怖いって、何が?」
僕は半分笑いながら聞き返した。
ところがK子は真剣な顔で、
「うしろよ。鏡の中に写る自分の背後から、何か出てきそうで怖いの」
と言う。
K子は中学が一緒で、
地元から少し離れた高校に通うようになってから仲良くなり、
1年ほど付き合っている。
運動は苦手でも、頭が良く、明るい性格のため友達も多い。
とてもそんな事を言い出す子では無い。
「何かあったの?」
僕は声のトーンを変えて、真剣に聞いてみた。
「3日くらい前かな。
髪の毛をとかそうと思って鏡の前に座った時、
背後に『何か』の気配を感じて・・・」
そう言ったきり黙ってしまった。
K子も自分が言ってる事がおかしいと思っているらしい。
「それからずっと?その・・・『何か』の気配は感じてるの?」
今度は僕から切り出す。
「うん。考えすぎなのかも知れないけど、そう思えば思うほど怖くなっていって・・・」
僕はK子のうしろにある鏡を見た。
化粧台に取り付けられた大きな鏡。
確かに気持ちは解らなくもないが。
「鏡をもう一枚置いてみたらどうかな?」
「・・・でも、『合わせ鏡はよくない』とも言うし」
そこで僕は吹き出してしまった。
「なんでも気にし過ぎなんだよ。K子は。きっと、うしろに気配を感じるのも気のせいだよ」
僕は励ますように明るく言ってあげた。
「うん、そうだね」
とK子は言うが、どこか不安な顔をしたままだ。
「どうしても不安になった時は、電話してくれてもいいから」
「ありがと」
と照れくさそうに言って、K子は笑った。
夜。歯を磨こうと洗面台に行き、鏡の中の自分を見つめていた時の事だった。
フッと首筋に冷たい空気があたり、僕はゾッとした。
鏡の中に何かの気配を感じる・・・僕の背中に隠れるようにして『何か』がいる。
とっさに僕は振り返ったがそこには何も無く、
ただ違和感だけが背中にぴったりと張り付いているようだ。
K子の言うとおりである。
僕は落ち着くよう自分に言い聞かせ、壁に寄りかかった。
なるほど。こうすれば背後への恐怖感は薄れる。
ホッとして歯を磨くと、口をゆすぐため洗面台に戻る。
「気にしてはいけない」
そう言い聞かせたその時、前かがみになった僕の背中に、ドサっと『何か』が飛びついたのだ。
驚いて僕は顔を上げると、一瞬、僕の首に腕を回して抱きついている『女』と目が合った。
その日、僕は眠ることなく部屋でテレビを見続けた。
壁に寄りかかりながら。
次の日、学校でいつものようにK子に会ったが、昨晩の事は何一つ話せなかった。
それは、彼女を怖がらせたくないという思いが一つ。
昨日「気にしすぎ」と言ってしまった手前、自分からは言い出せないのが一つ。
「昨日は、平気だった?」
僕は聞いてみた。
「うん。気にしないようにしてたから平気だったよ。ごめんね心配かけて」
大丈夫だよ。僕はそう言って笑ったが、内心不安でいっぱいだった。
彼女に話せないもう一つの理由。
何故かは解らないが、一瞬目が合った『女』は、何処と無くK子に似ていたのだ。

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