不思議で怖い話

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悪い虫

2019/02/26

高校生のとき、
互いの家を気軽に行き来できる仲の友人Aがいた。
Aが不在のときうっかりお邪魔しちゃっても、
Aのお母さんが、
「いらっしゃい!
いまね、ちょっと買い物に行きたいから、
留守番しててもらえないかしら。
おやつは冷蔵庫にあるからね~」
って留守を任してくれるくらいで、
Aのお母さんとうちの母さんもすごく仲がよくて、
ほんといい関係を築かせてもらってた。
あるとき、うちのばあちゃんの畑でとれた野菜を
おすそ分けしようと思って、Aの家へ日曜の昼頃行ったんだ。
呼び鈴押しても返事が無いときは、
自転車のサドルに隠してある合鍵使って入って、
居間に物置いてってもいいよって言われてたんで、
いつも通りに鍵取って玄関開けてお邪魔した。
家に入ったら、二階からなんとなく人の気配がすんの。
日曜の昼間に二人揃っていないことなんか今まで無かったから、
もしかしたらAかAのお母さんのどっちかが
具合悪くて倒れてんじゃないかって、咄嗟に嫌なこと考えて、
玄関に野菜置いて、急いで二階に上がった。
泥棒がいる可能性もあるから、
音を立てず忍者みたいにダッシュしたのさ。
Aの家の二階は、階段上って左側に、奥から納戸、Aの部屋、
トイレ、Aのお母さんの部屋って順になってたのね。
階段からちょっと首伸ばして二階の様子を伺うと、
奥から
「ブッ、ブッ、ププッ、プッ、ブッ」
と、空気が漏れてるみたいな音がする。
ある程度そのブゥブゥって音がすると、
その音の主は奥の納戸から出て、Aの部屋に入った。
するとまた、ブッ、ブッって音がしだす。
もうこりゃ絶対に変なやつがいる!と思って、
階段からそろ~っと立ち上がって、Aの部屋の前まで移動した。
ジャンパー着たオッサンが、Aの部屋でツバ吐いてた。
ブゥブゥって音の正体はこれだった。
絶句しちゃって立ち尽くしてたら、
オッサンが振り向いて、驚くこともなく
「やあ、こんちわ!」
って元気に挨拶してくんの。
俺ももう
「あ、はい・・・うっす・・・」
って返事しかできなかったよ。
「何してんすか?」
って尋ねたら、
「悪い虫がつかないようにね!こうしてるのさ!」
って、Aの部屋にあった可愛い小物、
ぬいぐるみとか、鏡台とか、
箪笥の中の服とか下着に、ツバかけまくってる。
完全にビビッた。
頭おかしい人がAの家に入っちゃってる。
警察呼ぼうと思って、
玄関の野菜抱えてダッシュで近くの交番まで行った。
警官さんが3人もついてきてくれたけど、
Aの家に戻ったときにはもぬけの空。
外出してたAとAのお母さんも丁度タイミングよく戻ってたんで、
事情説明したら、ふたりとも家の前の道端に泣き崩れちまった。
俺が見たツバ吐きオッサン、Aのお父さんだった。
離婚してからだいぶ経つのに、
Aたちが住んでる家を探し出しては
周囲をウロウロするっていうのを、
もう何度も繰り返してたらしい。
でもまさか家に入ってそんなことしてたなんて・・・って、
Aのお母さんぐったりしてた。
「ツバ吐かれたものを全部捨てる!」
ってAが泣きながら暴れるのを、
警官さんと俺とで羽交い絞めにして止めた。
ツバ吐かれた物は結局捨てたんだけどね。
だから俺と俺の家族もちょっとお金出して、
新しい下着とか服とか買う足しにしてもらったし、
ツバ事件のこともあったから、みんなでAの家の大掃除もやった。
その後は、鍵の管理もちゃんとするようにしてたし、
仕事してたAのお母さんの送り迎えを、
俺の兄ちゃんと父さんが交代でやってくれたり、(俺は免許無かった)
あと、警官さんも割りと真面目に見回りやってくれたりで、
ツバ吐きオッサンが出たのは、後にも先にもそれ一度きりだった。

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