不思議で怖い話

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四葉のクローバー

2019/01/18

大学帰り。
家の最寄り駅付近にケーキ屋があって、
俺は週に一度そこで妹にケーキ買って帰るのが日課なんだけど、
今週の月曜の夜もそこでケーキ買ってたんだ。
毎週来るから店のおじさんとは顔見知りで、
いつもみたいに店に入りながら軽く
「こんちはー」
って挨拶したら、
「買い忘れか?」
って言われて
「え?」
って返したら、
「さっき、みいちゃん(妹)と一緒に買いに来ただろ?」
「は?」
意味がわからなくて聞き返したら、おじさん曰く、
20分くらい前に、俺が十歳下の妹と手を繋いで
ケーキを二つ買っていったらしい。
俺はそんな記憶は無いし、
何より20分前は電車の中だった。
「え、どういう事っすか?
俺、今帰りで…駅から真っ直ぐここに来たんですけど…」
って返したら、おじさんは笑って
「いやいや。確かに俺君はここに来たよ」
と言って、続けてありえないことを言った。
「さっきの話だけど、俺君も大変だねえ。試験二つ落としてさ…」
夜遊びのしすぎは良くねえよ?
と付け加えるおじさんには悪いが、俺は背筋が凍った。
確かに俺は試験に二つ落ちて、
追試を言い渡されていたが、その試験の成績発表は今日。
さらに言うならば、
俺は大学でぼっちだから誰にもそのことは喋ってない。
だから俺以外の人間がそれを知るはずないのだ。
流石に気味悪くなり、
その日はケーキを買わずにそのまま家へ直帰。
玄関には妹の靴。
なんだ、ちゃんと帰ってきてるじゃないか…
と思いながらリビングに向かう。
すると妹がケーキを頬張ってるのが見えたので、
ちょうどいいからケーキ屋での事を聞こうと考えて、
ふと違和感に気づいた。
妹が頬張っているケーキの隣に、もう一つケーキがあった。
二つ目のケーキを見ていると、
生クリームをほっぺにつけて
キョトンとしてる妹と目が合った。
「あれ…?お兄ちゃ、おトイレ行ってたのに、どうして玄関の方から来たの??手品?」
むぐむぐとケーキを食べる妹が言った言葉に冷や汗が出た。
え、何それ怖い。
そんなこと思ってると、母が買い物から帰ってきた。
ちなみに家は玄関→リビングorキッチン→トイレor風呂って感じで、
奥に縦長の作りになっている。
リビングはトイレへの通り道みたいになっていて、
廊下らしい廊下は二階へ続く階段と二階しかない。
だから、トイレへ行ってたという俺が玄関から現れるワケない。
内心ちょっとかなりビビりながら、
買い物袋を下げて
「今日は魚が安かったのー」
と言ってニコニコ顔の母に、
ケーキ屋から今あったことを伝えると、
母は笑顔を消して寂しそうに笑った。
「そうなの…やっぱり俺君と一緒で妹想いなのね」
「え?」
と聞き返す俺に、しんみりとした悲しそうな声で
「食事の後で話すわ」
と言う母。
そして仕事から帰ってきた父と4人で食事をしてから、
その話を改めてすると、
父と母はお互いを見て何ともとれない顔をして、
父が妹に
「どこでお兄ちゃんと一緒になった」
と聞くと、妹が嬉しそうな顔で、
「学校帰りにM(妹)が転びそうになったの助けてくれたの!」
それから手を繋いで一緒に公園に行ったりして遊んで、
四葉のクローバくれたとも言った。
それを聞いた瞬間、今まで笑顔だった母が泣きだした。
それに妹はおろおろとしていたが、
それは悲しみというより嬉し泣きのようで、
「どうしたのさ?」
と聞くと、母は涙声で俺に言った。
「実はね、貴方は双子だったの。難産で、一人流れてしまったけど…」
それを聞いた瞬間、ああ…そういうことか。
と何故か納得がいった。
どうやら俺の弟は、おっちょこちょいで危なっかしい妹が心配で、
天国から降りてきて助けてくれたんじゃないか。とのこと。
妹が貰った四葉のクローバー。
流れた弟が眠る洋風の墓に三つ葉の群集があって、
母が生きて産めなかったことを悔やんで、探してよくお供えしたらしい。
俺、幽霊とか全く信じてなかったんだが、
この時ばかりは信じざるを得なかった。
ついでに、四葉のクローバーは幸福をもたらす意味があるらしい。
なんだか俺が勝手に、
ド、ドッペルだったらどうしよう俺死んじゃうの!?
とか思っててごめん;と罪悪感が生まれた。

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