不思議で怖い話

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音声キーボード

2019/01/10

まだ娘が幼稚園に通っていた頃、
妻が50音の音声キーボードを買い与えました。
電源のオンオフで挨拶もする優れ物で、娘も大層喜び、
仕事疲れの私の前にわざわざ持ってきて遊び出すほどでした。
しかし、やがては飽きるもの。
数ヶ月もすれば、
娘にとっては無用の長物になってしまいました。
それは私が押し入れへ収納しましたが、
あくる日、妻より相談を受けました。
「あれ壊れてるみたい。電源も入れてないのに、
たまに『バイバイ』『バイバイ』って聞こえるのよ」
押し込んだ際に故障したのか、電源OFFで聞ける
『バイバイ』
が不規則に発信されてしまうように。
娘もすっかり怖がっている様子で、
押し入れには近寄っていないようです。
そして休日、家族揃って晩餐を楽しんでいた時、
私の耳にもはっきりと
『バイバイ』
と聞こえてきました。
不意打ちだったようで娘はとうとう泣き出す始末。
妻に叱られ、私は工具を引っ張り出しました。
押し入れより音声ボードを取り出すと、
スピーカー部分をハンマーで叩き壊し、
機能という機能を破壊しました。
その後、燃えないゴミとして袋に詰め、
私の部屋隅に一時隔離。
数日後、ゴミ収集日に捨てました。
バラバラにして
「もう安心だよ」
と娘を慰め、父親としての面目を保ちましたが、
私がバラバラにしたのは理由があります。
最初、ドライバーでカバーを外して電池を抜いたのですが、
『バイバイ』
と確かに聞こえてきたのですよ。
今にして思えば幻聴としか思えませんが、
娘が成人した今でも話すことはできません。
私が恐怖にかられて玩具を破壊したなど。

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