不思議で怖い話

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ぐにゃぐにゃおばさん

2018/11/30

大無間から光へ。
これが一発でわかる奴は山が好き。
けど、行った事のある奴は少し変態かな。
このルートはそんな所だ。
これは2001年夏。
その山行の終盤、加々森から光へ抜ける時の話。
加々森は陰欝なピークだ。
見晴らしがきかず、暗く寂しいから、
留まるような場所じゃない。
友人と二人で来てみたものの、
鹿の骨が散乱する暗い深南部の森もいい加減厭きてきてたし、
会社に休みを延長してもらって、
明るい聖まで足を延ばそうかなぁなんて思いながら、
ほとんど加々森には立ち止まらず、先へ進んだ。
起伏が連なり、ほとんど消えかけた道をしばらく進んでいると、
やがて急な下りに。先行した友人が舌打ちをして止まる。
「うわ、わりぃ。ルート間違えた。」
地図を見ると、確かにこんなに下っていない。
光岩へ右に行く所を直進してしまい、
尾根をかなり下ってしまったようだった。
溜息をついて戻ろうとしたが、ぬかるんだ急斜面。
ずるずるに滑って、上るのは結構骨が折れそうだった。
「まぁ、場所はだいたいこの辺だから、
少しトラバースして、上りやすいとこから、行こうや。」
なんとなく萎えた気持ちのまま、
しばらくトラバースすると急に開けた場所に出た。
紫の原っぱ。
窪地いっぱいに広がるミヤマトリカブト。
素晴らしくきれいだった。
こんな場所があったのかぁ。
見回せば、この窪地から上へ小さい道が続いている。
誰か知ってて来る人もいんのかなぁ?
とりあえずルートに戻れそうだ。
俺は少しほっとした。
その時、トリカブトの群落から
派手な合羽のおばさんがすうっと出てきた。
「助かるわぁ。道に迷ったんです。お兄ちゃん光まで連れてって。」
友人が震えているのが不思議だった。
「まぁ、ルートはこの上だと思うんです。
この道悪いかもしれんけど。」
俺たちも迷ってしまった事は棚にあげて、
俺は自信満々だった。
まぁ、現在地もだいたい把握できてたからだと思う。
じゃあ行きますか?
ところが、俺が先に行こうとした途端に、
友人が俺の腕をひっつかんで、絞りだすような声で呻いた。
「俺たちは後から行くから、先に歩け。」
おばさんは少しお辞儀をして、
先に上る道を上がっていった。
が、遅い。たいした坂でもないのに
這いずるような格好で辛そうに歩く。
あまりに遅いペースにいらだち、
先に行ってルート見てくるから、
おばさん後からゆっくり来なよって言おうとした瞬間、
友人が俺につぶやいた。
「こいつに後からついてこられるのは嫌だからな。絶対見える所がいい。」
なんとなく気持ち悪くなってきた。
このおばさんはどこに行くつもりだったんだ?
光より南から、こんな装備で来たはずない。
光から来たなら、こんなとこには来ない。
おばさんはなんだかぐにゃぐにゃと上っている。
「ねぇ。どっから来たんですか?」
俺の問いには一切答えずおばさんは言った。
「前。代わらない?」
「代わらない!行けよ!」
友人が怒鳴る。
「前。代わらない?」
ぐにゃぐにゃのろのろ歩くおばさんの後をしばらく上った。
四、五回同じ問答をしたと思う。
俺はいつの間にかすっかり、怯えていた。
だが、ぐいっと急斜面を上ると突然本道にでた。
「あぁ、良かった。戻ったぁ。」
と思った瞬間。
バキン!!と音をたてて
オバサンの首が直角に曲がったんだ。
そんですぅっとさっきの道を下りていった。
俺は怖いというより、
驚いて硬直したまましばらく動けなかった。
その後は、光小屋までものすごいスピードでいったよ。
友人はその晩言った。
「おまえ合羽のフードの中の顔見た?
目も鼻も口の中も全部土がいっぱいに詰まってたぞ」
って。
あんなのにぴったり後ろついて歩かれるのは、
俺は絶対に嫌だねって。
まぁ、そんだけ。
俺は山は好きだけど、あれから光より南は行ってないなぁ。

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