不思議で怖い話

不思議で怖い話

本文の文字サイズ

空いていた部屋

2018/11/17

もう10年ほども前のことです。
盆の時期でした。
私は実家に帰省するために単車で
東京から石川に向かっていました。
本来なら一日で到着する予定だったのですが、
あちこち寄り道しているうちに夕闇に包まれ、
やむを得ず途中で宿を取り、
一泊して帰省は次の日にすることにしました。
そこは海沿いの町だったのですが、
海水浴の時期だったこともあり、
ほかの宿はすべて埋まっていて、
その宿のその部屋だけが空いていたのです。
私は「運がよかった」と喜び、
一日中運転をしていた疲れもあって、
食事を取るとすぐに寝てしまいました。
そうしてしばらくは気持ちよく寝ていたのですが、
深夜の3時ごろだと思います、
足首にずんとした重みを感じ始めて眼が覚めました。
半分寝ながら、
「ずっと運転していたので疲れが抜けていないのだろう」
と一人合点していたのですが、
かばんの中に湿布が入っていたのを思い出し、
明日の運転に備えて張っておこうと考えて
電気をつけるために上半身を起こしました。
すると、暗闇の中で、布団の上、
自分の足首あたりに何かが乗っているのに気づきました。
不審に思って目を凝らしてよく見ると、
それは中年の男の生首でした。
首は私と目が合うと、にやりと笑いました。
私は全身の血が抜けるような恐怖に襲われましたが、
ここで狼狽すれば取り込まれる、と本能的に感じて、
悲鳴を押し殺すと首をにらみつけました。
すると、首のほほがみるみるこそげていって、
あっというまに白いどくろになりました。
そしてどくろはそのまましばらく
私のほうをじっと見つめていましたが、
次の瞬間ふっと消えてしまいました。
私はもう湿布どころではなくなり、布団を頭から被ると、
ふるえながらひたすら朝が来るのを待ちました。
体中冷や汗でびっしょりでしたが、
手足の一部でも布団の外に出しては
危険な気がして布団の中にくるまり続けていました。
やがて布団越しに朝日を感じ、始めてほっとしました。
足に感じていた重みはとうに消えていました。
それから3年ほど経って、その町に再び寄る機会がありました。
そこで(もう泊まる気はありませんでしたが)、
その宿に立ち寄って予約状況を尋ねてみますと、
私が以前泊まった部屋はリストにありませんでした。
どうやら普段は使っていない部屋のようで、
前回はほかの部屋が一杯なのでやむを得ず
私をその部屋に入れたようです。
なぜ使っていないのか尋ねても
「従業員が使っている」
「痛んで使用に耐えない」
といった答えではぐらかされてしまいました。

にほんブログ村 2ちゃんねるブログ 2ちゃんねる(オカルト・怖い話)へ

よろしければ応援お願いシマス

怖いコミック

  • 生贄家族
  • 結婚――それは、血の違う二人が結ばれる素晴らしき契約。自らが主役となる結婚式の最中、警察内部の頼れる同僚達の力を借り、阿久津家地下潜入を狙う純平。一方、里志殺害を狙う理沙子の計画...
  • たちよみ

怖い映画作品

  • 貞子3D2 貞子の呪い箱弐(数量限定生産) (ブルーレイディスク)
  • 瀧本美織の映画初主演となるホラー第2章。‘呪いの動画’から5年。茜と孝則の間には娘・凪が生まれたが茜は出産後に死亡、孝則は妹に凪を預け隠遁生活をしていたが…。スマホ連動型‘ス...
  • 2013年 / 瀧本美織 瀬戸康史 山本裕典 田山涼成 大西武志 大沢逸美 石原さとみ 平澤宏々路

怖い作品

怖いキーワード