不思議で怖い話

不思議で怖い話

本文の文字サイズ

百貨店のホームレス

2019/10/30

俺が働いている百貨店でたまに、店内を浮浪者が彷徨いているから何とかしてくれ、と言うクレームが入る。
皆、慣れたものでおいおい、またか、と。
だいたい出入口から各階警備員で固めているので、そんな輩が入り込めるはずがない。
口を揃えて、見える人にはやはり見えるもんなんだな、と。
うちの百貨店は戦後の復興期に隣に新館を建てて今に至るのだが、以前は旧館に三人の浮浪者が住み着いていたらしい。
何度追い出しても戻ってくるし、その頃は浮浪者も一般人も大して変わらない風体だったしで、さほど問題とはされなかった様だ。
そればかりか、ある程度、店の連中とも仲良くし、ごみ拾いなんかの仕事もして順応していた様だ。
しかし、ある程度街が復興し、隣に新館を建てる予定が出てくる頃となると、少々話が違ってくる。
今まで通り、店内に居住させるのは如何なものか、と言う意見が多数となる、実際に汚らしい、などと言うクレームめいたものも客から出る様になって来た。
そのうちに新館の建設とともに旧館も全改装となり、主だった従業員は休みをとる。
従業員が改装終えた旧館に戻った時にはもう、三人の浮浪者は消えていたと言うことだ。
何処に行ったのか知るものはいない。
語るものもいない。
今よりも人が消え易い時代だったのだ。
しかし、それから現在に至るまで、年に何度か客からのクレームが入る。
浮浪者を何とかしてくれ、と。
決まって旧館だ。
俺達はこう言うしかないじゃあないか。
見える人にはやはり見えるもんなんだな、と。

にほんブログ村 2ちゃんねるブログ 2ちゃんねる(オカルト・怖い話)へ

よろしければ応援お願いシマス

怖いコミック

  • 鬼ゴロシ
  • 迎えた滅絶の14日、強行された新条祭り。騒乱の規模は加速を極め、遂には巨大な火災旋風が市民と街を飲み込んでいく。 失う物の無い春原は、新条全てを道連れに己の最高潮を仇敵と共有し問...
  • たちよみ

怖い映画作品

  • 怪奇蒐集者 西浦和也
  • 「怪談」の原点に徹底的にこだわった実話怪談トークシリーズ第5弾「西浦和也」編。「北野誠のおまえら行くな。」シリーズの企画・構成を手掛ける怪異蒐集家・西浦和也。現代の怪奇実話を...
  • 2014年 / 西浦和也 蜃気楼龍玉

怖い作品

怖いキーワード